プロが明かす「メディアで採用されるBGM」の共通点と制作裏側
— MARUYA328/合同会社momopla(運営:中丸 勲)の実体験から —
はじめに:なぜ「選ばれる側のBGM」になれたのか
YouTube もテレビも、今はコンテンツが溢れています。
そんな中で、ひとつのBGMが長期にわたって使われ続けるのは、実はかなり珍しいことです。
- HIKAKIN氏の「許せねぇ」シリーズで使われ続けている任侠風BGM
- FNS系列29局以上でニュース・情報番組・特集などに採用されている「時代劇風の祭曲」
これらは、偶然選ばれた“ラッキーな1曲”ではありません。
「どうすればメディアにとって“使いやすく、かつ印象に残るBGMになるか」 を、徹底して研究し続けた結果として生まれた楽曲です。
私は合同会社momoplaの一員として、音楽ブランド 「MARUYA328」 を運営し、
BGMライブラリサイト 「フリーBGM.jp(https://www.freebgm.jp/)」 を中心に、
YouTube・テレビ・企業VP・ゲームなどへ音源を提供してきました。
この第3のテーマでは、
「なぜ HIKAKIN氏やFNSテレビ局が、私たちのBGMを“選び続けているのか”」
その裏側にある制作哲学と、具体的な音づくりの話をお伝えします。
第1章 まずやるのは「歴史に残る人気曲の研究」から
私たち MARUYA328/合同会社momopla のグループが、
何よりも大事にしているのは 徹底した“リサーチ” です。
● 出発点は「歴史に残る人気曲は、なぜ愛され続けるのか?」
いきなりDAWを立ち上げて作り始めることはありません。
まずやるのは、
- 歴史に残っているヒット曲
- 特定のジャンルで“定番”になっているBGM
- 日本人の記憶に深く刷り込まれている和風・祭り・任侠・バラエティ系のサウンド
こういった「すでに耳に馴染んでいる音楽」を徹底的に分析することです。
メロディだけでなく、
- ブラスのボイシング
- 太鼓やドラムのパターン
- ベースラインの動き
- 和音の組み方(コード進行)
- 間の取り方・ブレイクの入れ方
まで細かく研究します。
● ただし「真似」はしない。“著作権の反転”という考え方
ここで大事なのは、コピーではなく、“著作権の反転” を行うということです。
つまり、
- 既存曲の“音符”や“フレーズ”をなぞるのではなく
- 聴いたときに感じる「印象」や「構造」「空気感」を抜き出し
- それをもとに まったく別のオリジナル楽曲 として再構成する
という作業をします。
「みんなの耳に馴染みがあるのに、どこにも存在していなかった新曲」
ここを狙っていくのが、私たちの制作スタイルです。
第2章 HIKAKIN「許せねぇシリーズ」BGM制作の裏側
YouTube界隈でよく知られている「許せねぇ」「一生恨むぞ」など、
HIKAKIN氏の人気シリーズで使われている任侠風BGMは、
私が制作した楽曲です。
この曲が生まれた背景には、
まさに 「人気曲の研究」+「著作権の反転」 という2つの軸があります。
● 任侠・昭和テイストの“皆が知っているあの世界”をどう再構築するか
任侠映画や昭和のドラマで流れていたような、
「義理と人情」「怒り」「やりきれなさ」が混ざった世界観。
その世界観を音で再現するために、まず着目したのが ブラス(ホーン)セクション でした。
- トランペット
- トロンボーン
- サックス
これらの 音域・和音の重ね方・ユニゾンとハモりのバランス を綿密に設計し、
「聴いた瞬間に“あの世界”を感じるのに、どの曲とも被っていない」
状態を目指しました。
特に気を使ったのは、
- ブラスが鳴る“タイミング”
- 「決め」の瞬間の音の厚さ
- サビでの“押し出し感”
です。
キャラクター性の強いHIKAKIN氏のリアクションとぶつからないよう、
あくまでBGMとして主張しすぎず、しかし存在感はある というバランスを取りました。
● 「耳に馴染むのにオリジナル」だからこそ選ばれた
YouTuberは、数秒聴いただけで
「これは自分の動画に合う」「これは違う」と瞬時に判断します。
この任侠風BGMは、
- どこかで聴いたことがあるような、“昭和的なカッコよさ”
- 現代のYouTubeテンポにも合う、小気味よい展開
- 編集しやすい構成(フレーズのまとまり、ループのしやすさ)
こうした要素が揃っていたため、自然と HIKAKIN氏の「許せねぇシリーズ」の世界観にハマったのだと思います。
結果的に、
「HIKAKINのあのBGM」として認識されるレベルで定着した ことは、
制作者としても非常にありがたい出来事でした。
第3章 「時代劇風の祭曲」がFNS全国ネットに使われ続ける理由
次に、フジテレビをはじめFNS系列29局以上で使われている
「時代劇風の祭曲」(Nextone登録作品) について。
これは、まさに “日本人の祭りのイメージ”を徹底的に研究した曲 です。
● 「祭り」という言葉から、まずイメージを分解する
「祭りのBGMを作ろう」と考えたとき、
単に太鼓を入れて、笛を鳴らせばいいわけではありません。
日本人が「祭り」と聞いて思い浮かべるのは、
- 神輿・山車・太鼓台
- 法被姿の人々の掛け声
- 北島三郎のような演歌的な世界観
- 民謡・盆踊り・演歌歌謡曲に共通する“高揚感”
など、文化的な記憶の集合体です。
私はこれらを一つずつ要素に分解していきました。
● 太鼓は“四つ打ち”と“間”が命
研究の中で特に重要だとわかったのが、太鼓のリズム です。
結論として導いたのは、
- 基本は「ドンドコ」の四つ打ちで土台をしっかり作る
- その上で、合いの手的なフィルを入れて高揚を作る
- 叩きすぎると“騒がしくて映像を邪魔する”ので、空白(間)も音楽の一部として設計する
という構造でした。
「常に鳴らし続ける」のではなく、「鳴らさない時間をどう作るか」 が、
ナレーションやSEを邪魔しない“使いやすいBGM”の鍵になります。
● 三味線は「単体の音」で世界を作る
三味線に関しては、
むやみに複雑なフレーズを弾かせるのではなく、
単体の音が曲全体を支えるような設計 を心がけました。
- 低音〜中音域でリズムを刻む
- 要所だけ高音で「キメ」を入れる
- ベースや太鼓と周波数がかぶりすぎないよう調整する
こうすることで、
全体が“輪(和)”としてまとまる ミックスが実現します。
結果として、この「時代劇風の祭曲」は、
- ニュース
- 情報番組
- 特集VTR
- ドキュメンタリー
などジャンルを問わず使える、
「使いやすさ」と「日本らしい個性」の両方を兼ね備えたBGM となり、
FNS系列局でヘビーに使用されるようになりました。
第4章 メディアがBGMに求める“3つの条件”
ここで整理しておきたいのは、
テレビ局や人気YouTuberがBGMに求めている条件は何か? という点です。
私の経験から言うと、核心はこの3つです。
① 耳に馴染む“分かりやすさ”
- 聴いてすぐに世界観が伝わる
- ジャンル感が一発で分かる(祭り・任侠・感動・緊迫 など)
- メロディやリズムが“情報過多”ではない
② 映像を邪魔しない“使いやすさ”
- ナレーションやセリフが乗っても聞きにくくならない
- 必要なところで盛り上がり、不要なところでは引く
- 編集しやすい構成(フレーズの切れ目/ループのしやすさ/フェードアウトのしやすさ)
③ 著作権面で“安心して使える”
- 他曲との類似リスクが少ない
- 権利関係が明確
- YouTubeなどのコンテンツIDでトラブルにならない
この3つを 最初から前提にして作るかどうか が、
「選ばれるBGM」と「埋もれるBGM」の分かれ目になります。
第5章 MARUYA328グループの制作フローと研究手法
ここで、MARUYA328/合同会社momoplaが
どのような手順で「メディアに選ばれるBGM」を作っているか、
もう少し具体的に触れておきます。
● 1. ヒット曲・定番BGMの徹底研究
- そのジャンルで“代表曲”と言われるものを複数ピックアップ
- 楽譜レベルの分析(耳コピ+構造分析)
- ドラム・ベース・コード進行・メロディ・ブラスなどパートごとに分解
● 2. 「印象のコア」を抽出する
「この曲を○○らしくしている要素は何か?」
という問いに対して、
- リズムの傾向
- メロディの動き方
- 音色の選び方
- ミックスの重心(低域が強いのか、中域中心なのか)
といった「本質的な要素だけ」を抜き出します。
● 3. 著作権ラインを明確にした上で“反転”
- メロディラインは一切流用しない
- コード進行も被りすぎないように工夫
- 一見似ている世界観でも、構造はまったく別物にする
これが、先ほど述べた
“著作権の反転” です。
● 4. 実際の現場を想定して作る
- YouTube編集画面を頭に思い浮かべながら尺を設計する
- テレビのVTRを想定して「30秒・60秒で決まるフレーズ」を作る
- ループのしやすい位置・フェードアウトしやすい構造を意識する
最初から 「使われる前提」 で設計しているからこそ、
メディア側にとっても扱いやすい楽曲になるのです。
第6章 「安全に使える」こともメディア採用の重要条件
ここまで音楽的な側面を中心に話してきましたが、
現代のメディアにおいては 著作権・コンテンツIDの問題 を避けて通れません。
私たちのグループでは、
- すべての楽曲を 完全オリジナル として制作
- YouTube上でのコンテンツIDチェックを事前に行い
- 稀に問題が出た場合も、即座に修正・差し替えを行う技術と体制を整備
しています。
一般のクリエイターにとって、
コンテンツIDトラブルは一度起こるだけでも大きなダメージです。
しかし私たちのように、
- 音楽理論+現場経験
- 技術的な修正能力
- 法的なリスク意識
を組み合わせたチームなら、
「問題が起きないように作る」+「万が一のとき即対応できる」 という二重の安心を提供できます。
これが、HIKAKIN氏やテレビ局など 影響力の大きいメディアほど、私たちの音源を選びやすくなる理由 の一つでもあります。
おわりに:なぜフリーBGM.jpは“メディアに強い”のか
ここまでお話ししてきた通り、
HIKAKIN氏の「許せねぇシリーズ」や、
FNS全国ネットで使われている「時代劇風の祭曲」は、
- 偶然選ばれた
- たまたまヒットした
のではありません。
- 歴史に残る人気曲の徹底研究
- 著作権ラインを理解したうえでの“反転”
- 日本人の記憶に深く刻まれた「祭り」「任侠」「昭和」のイメージ研究
- メディアの現場から逆算した“使いやすい構成”
- そして、合同会社momopla/MARUYA328としての、
「事故を起こさない」「トラブルを出さない」制作・管理体制
これらすべての積み重ねが、
「選ばれるBGM」「長く使われるBGM」 を生み出しています。

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