小室哲哉サウンドが時代を変えた理由

90年代J-POP作曲研究

ビーイングサウンドとの違いを作曲家の視点から考える

90年代から2000年代初頭のJ-POP黄金期を語る上で、ビーイングサウンドと並んで欠かすことのできない存在が、小室哲哉サウンドです。

ビーイングサウンドが数多くのヒット曲を生み出していた90年代前半、その流れに続くように小室哲哉さんがプロデューサーとして頭角を現し、日本のJ-POPは大きな転換期を迎えました。

私は、この二つは優劣を競うものではなく、それぞれ違う方向から90年代という時代を築き上げた音楽だったと考えています。

※本記事は、30年以上作曲を続けてきた私自身の視点から、90年代~2000年代初頭のJ-POP黄金期について考察したものです。小室哲哉サウンドの魅力はとても一つの記事で語り尽くせるものではありません。本記事では、その中でも私が特に印象的だと感じたポイントを中心にまとめています。


団塊ジュニア世代とともに成長したJ-POP

当時は団塊ジュニア世代という非常に人口の多い世代が、ちょうど20代へ入っていく時代でした。

今では考えられませんが、多くの人が毎月何枚もCDを購入し、1万円近くを音楽に使っていました。

今で言えば、スマートフォンや動画配信サービスへお金を使う感覚に近かったのかもしれません。

10代ではBOØWYを中心としたバンドブーム、そしてZARD、WANDS、DEENなどのビーイングサウンドとともに青春時代を過ごし、そのまま20代へ入り、恋愛やクラブカルチャーなど新しいライフスタイルを楽しむ世代へと変わっていきます。

そのタイミングで登場した小室サウンドは、その世代の空気と見事に一致しました。

私は、小室サウンドは単なるヒットメーカーの音楽ではなく、「時代」と「世代」が重なったことで生まれた音楽だったと思っています。


TM NETWORKから始まっていた小室哲哉の世界

小室哲哉さんは、プロデューサーとして突然現れたわけではありません。

TM NETWORKの頃から、シンセサイザーを中心としたデジタルサウンドと、優れたメロディメーカーとして多くのファンを魅了していました。

私自身もリアルタイムで聴いていましたが、特に女性人気は非常に高く、それまでのJ-POPにはない都会的で洗練された世界観を持っていました。

その経験があったからこそ、後のプロデューサーとしての成功につながったのだと思います。


ビーイングサウンドとの違い

私が感じる一番大きな違いは、音楽の出発点です。

ビーイングサウンドは、ロックを土台にしながらポップスへ昇華した音楽でした。

一方、小室サウンドはダンスミュージックをJ-POPへ取り込み、新しい時代のポップスとして完成させました。

だからリズムも違えば、アレンジも違います。

しかし、どちらにも共通していることがあります。

それは、**「狙っていることを感じさせない」**ことです。

実際には綿密に計算されているはずなのに、その計算を聴き手へ見せない。

だから自然に耳へ入り、多くの人が名曲として受け入れたのだと思います。


コード進行の美しさ

私が小室哲哉さんの作品を研究していて驚いたのは、コード進行の美しさです。

一般的なJ-POPでは、ダイアトニックコードをシンプルに並べて曲を構成することが多くあります。

しかし私が分析していて感じるのは、小室さんはコードを単なる伴奏として扱っていないということです。

コードそのものがメロディに呼応するように細かく変化し、maj7、6th、add9、m7などのテンションを自然に取り入れながら、その瞬間のメロディに最も心地よい響きを選んでいるように感じます。

つまり、コード進行という「型」の上へメロディを乗せるというより、コードとメロディを同時に設計しているような感覚です。

もちろんこれは私自身が分析して感じたことですが、この一体感こそが小室サウンドの大きな魅力ではないでしょうか。

海外のダンスミュージックから影響を受けながらも、日本人が自然に口ずさめるJ-POPへ昇華してしまう。

このメロディセンスは、小室哲哉さんならではの才能だったと思います。


時間が経って初めて分かったこと

正直に言えば、私が20代だった頃、小室サウンドは音楽ファンの間で「ヒットを狙い過ぎている」と言われることもありました。

私自身も、当時はどちらかと言えばそういう見方をしていました。

しかし30年以上作曲を続け、改めて聴き返してみると、その印象は大きく変わりました。

例えば、安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」は、多くの人が結婚式で流し、その曲とともに人生を歩んできました。

そう考えると、音楽は「邪道か正道か」で評価するものではありません。

誰かの人生に寄り添い、長く愛され続けること。

それこそが、本当の名曲なのだと今では思います。

私自身の好みで言えば、TM NETWORK時代の「Self Control」や「Still Love Her」のような作品により強く惹かれますが、それは優劣ではなく、一人の作曲家としての好みです。


avexが変えた音楽業界

小室サウンドが時代を変えた理由は、音楽だけではありません。

その背景には、avexの存在があります。

それまでの日本の音楽業界は、レコード会社ごとに音楽性やカラーを競い合い、それぞれの会社が独自のアーティストを育てる時代でした。

しかし、小室哲哉さんと松浦勝人さんが組んだことで、音楽ビジネスは大きく変化します。

「どんな音楽を作るか」だけではなく、

「どう見せるか」

「どう世の中へ届けるか」

という事を強く意識したプロデュースそのものが、大きな価値を持つ時代になりました。

そして、その戦略は団塊ジュニア世代という巨大なマーケットと見事に重なります。

音楽性だけではなく、時代背景、マーケティング、そして世代。

そのすべてが一致したことで、小室サウンドは社会現象と呼ばれるほどのブームになりました。

私は、avexは単にヒット曲を量産した会社ではなく、日本の音楽業界を「作品を作る時代」から「作品を届ける時代」へ進めた存在だったように感じています。


二つのサウンドがあったから黄金期になった

90年代から2000年代初頭を振り返ると、ビーイングサウンドと小室サウンドは対立する存在ではありません。

ロックをルーツにしたポップス。

ダンスミュージックをルーツにしたポップス。

それぞれ違う方向からJ-POPを進化させ、多くの名曲を生み出しました。

そして、その背景には作曲家の個性だけではなく、レコード会社の思想や時代そのものの空気も存在していました。

だから私は、この時代を一つのジャンルとしてではなく、**「90年代~2000年代初頭のJ-POP黄金期」**として捉えています。

それぞれの作曲家が持っていた個性。

それぞれのレコード会社が目指していた音楽。

そして、それを受け入れる時代と世代。

そのすべてが重なったからこそ、この時代は日本の音楽史に残る黄金期になったのではないでしょうか。

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FREEBGM RECORDSは、1980年代〜2005年のJ-POPスタイルをテーマにしたオリジナル音楽レーベルです。

ZARD、B’z、ビーイング系、小室ファミリー、歌謡曲などの時代から影響を受けたオリジナル楽曲を発表しており、全楽曲の作曲・プロデュースは MARUYA328 が担当しています。

FREEBGM RECORDS
https://www.freebgm.jp/record-vr1.php


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執筆者プロフィール

MARUYA328(中丸 勲)

合同会社momopla 代表 / 総合BGMプロデューサー

音楽制作歴30年以上。テレビ番組、企業案件、インターネット動画向けのBGM制作を手がけ、これまでに29,000曲以上のオリジナルBGM・効果音を制作。制作した楽曲は、テレビ番組、企業コンテンツ、有名YouTuberの動画など、幅広いメディアで採用されています。

現在は、オリジナル音楽素材サイト AIBGM(AI BGM Library) および FreeBGM.jp を運営し、映像制作者・動画クリエイター・企業向けに音楽素材を提供しています。公開楽曲の累計ダウンロード数は50万ダウンロードを突破しました。

また、自身も日々コンテンツ制作や音楽制作を行いながら、BGMの選び方、動画演出、著作権・商用利用、音楽制作、AI音楽活用などについて、実際の制作経験とサイト運営の実績をもとに情報を発信しています。

主な実績

  • 音楽制作歴30年以上
  • オリジナルBGM・効果音 29,000曲以上 制作
  • 公開楽曲累計 50万ダウンロード突破
  • テレビ番組での採用実績多数
  • 有名YouTuber・映像クリエイターへの楽曲提供実績
  • AIBGM(AI BGM Library) 運営
  • FreeBGM.jp 運営
  • 映像制作・動画活用・AI音楽分野に関する情報発信を継続中

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