90年代~2000年代初頭のJ-POP黄金期を作曲家の視点から考える
※本記事は、30年以上作曲を続けてきた私自身の視点から、90年代~2000年代初頭のJ-POP黄金期について考察したものです。このテーマは一つの記事で語り尽くせるものではありません。本記事では、その中でも私が特に印象的だと感じたポイントを中心にまとめています。
「良いサビ」と「売れるサビ」は少し違う
「サビはキャッチーに作れば売れる。」
作曲の世界では、そんな話を耳にすることがあります。
もちろん、覚えやすいメロディは大切です。
しかし30年以上作曲を続け、90年代から2000年代初頭のヒット曲を数え切れないほど分析してきた私には、それだけでは説明できないと感じています。
私は、「良いサビ」と「売れるサビ」は少し違うものだと思っています。
🎵 実際の作品を試聴する
この記事で紹介している作曲理論をもとに制作した90年代J-POPスタイルのオリジナル作品です。
作曲にはいくつもの作り方がある
作曲にはさまざまな方法があります。
最初にサビから作る「サビ先」。
ピアノやギターを弾きながら、自然に曲全体が出来上がっていく方法。
先に曲を完成させ、そのあと歌詞を乗せる「曲先」。
作曲家によってやり方はさまざまです。
現在は曲先で制作されることも多くなりましたが、私が分析してきたビーイングサウンドには、サビを中心に楽曲を組み立てている印象を受ける作品が数多くあります。
ただし、サビを最初に作ることと、売れるサビを作ることは別の話です。
サビだけでは名曲にはならない
私が「この曲は残るかもしれない」と感じるとき、サビだけを聴いて判断することはありません。
イントロ。
Aメロ。
Bメロ。
サビ。
エンディング。
曲全体を通して初めて、そのサビが本当に生きているかどうかが見えてきます。
つまり、サビは単独で存在しているものではありません。
楽曲全体の流れの中で初めて力を持つものなのです。
「その人だから歌える」が一番大きい
私が90年代~2000年代初頭のJ-POP黄金期を研究していて一番感じるのは、ここです。
サビが耳に残る理由は、メロディだけではありません。
アーティストの個性。
歌声。
歌詞。
そして、その人だから歌えるメロディ。
この四つがぴたりと重なったとき、人はそのサビを忘れなくなります。
しかも、そのメロディは教科書どおりではありません。
少しだけ予想を裏切る。
少しだけセオリーを外す。
でも、そのアーティストが歌うと、それが違和感ではなく、
「この人らしい。」
という個性になる。
私は、この絶妙なバランスこそ90年代~2000年代初頭のヒット曲に共通する魅力だったと思っています。
サビは「刷り込まれる」ことで名曲になる
もう一つ、見落とされがちな要素があります。
それは、サビが生活の中に何度も入り込んでいたことです。
90年代はテレビの影響力が非常に大きな時代でした。今のようにメディアが細分化されておらず、同じ時間に同じ番組を見ている人の数そのものが桁違いに多かった時代です。
その象徴が、ドラマ主題歌や音楽番組と並んで、企業CMでした。
私が特に印象深いのが、1994年のポカリスエットのCMです。一色紗英さんが、夏の日差しの中で屋根のペンキを塗り直している。そこへ自転車で通りかかった男の子がふと彼女を見上げ、一度は通り過ぎたかと思うと、ポカリスエットを二本買って戻ってくる。そして屋根の上で、二人でそれを飲む。
まるで映画のワンシーンのような、爽やかで美しい青春の一場面です。
そこに流れていたのが、DEENの「瞳そらさないで」でした。夏の光、青春の一瞬、そしてサビのメロディが、映像と完全に一体化して記憶に刻まれる。曲単体で聴くのと、あの映像とセットで刷り込まれるのとでは、耳への残り方がまったく違います。
街へ出れば有線で流れている。CDショップでも流れている。テレビをつければ、ドラマでもCMでも、同じサビが繰り返し耳に入ってくる。
これは単なる宣伝ではありません。
生活の中で自然に繰り返し聴くことで、その曲は少しずつ記憶へ定着していきました。
だから今でもイントロが流れた瞬間に、
「あ、この曲知ってる。」
となる人が多いのでしょう。
アーティストも「上昇気流」に乗っていた
さらに当時は、アーティスト自身が成長していく時代でもありました。
デビューして終わりではありません。
一曲ごとに人気が伸び、
ライブを重ね、
ファンが増え、
その成長とともに楽曲も広がっていきました。
つまり、売れるサビとは、
メロディだけではなく、
アーティスト自身の勢い、
時代の空気、
そして楽曲の完成度がすべて重なった結果だったのです。
だから同じメロディを別の人が歌っても、同じような感動にはならない。
その人だから成立するサビだったからこそ、多くの人の心に残ったのだと思います。
技術だけでは説明できない
AIは、美しいメロディを作ります。
コード進行も整っています。
アレンジも驚くほど自然です。
しかし私は、AIで約3万曲を生成・検証する中で、改めて感じました。
サビとは、メロディだけでは完成しない。
アーティストの個性。
歌声。
時代。
メディア。
そして何度も人の耳へ届く環境。
そのすべてが重なって初めて、一つのサビは名曲になっていくのです。
だから私は、90年代~2000年代初頭のJ-POP黄金期のサビは、単に覚えやすかったのではなく、
その時代だからこそ生まれ、その時代だからこそ人々の記憶に深く刻まれたものだったと考えています。
📚 90年代J-POP作曲研究|おすすめ記事
90年代〜2000年代初頭のJ-POP黄金期を、作曲家の視点から考察・研究しています。
- 私が90年代J-POP黄金期を書き続ける理由
https://www.freebgm.jp/why-i-write-90s-jpop - ビーイングサウンドが今でも色褪せない理由
https://www.freebgm.jp/being-sound - 小室哲哉サウンドが時代を変えた理由
https://www.freebgm.jp/komuro-sound - 音楽は技術だけで作れるのか
https://www.freebgm.jp/music-is-not-only-technique - 90年代J-POPが教えてくれる「人を育てる」という制作哲学
https://www.freebgm.jp/artist-development-philosophy - なぜCDはあんなに売れたのか
https://www.freebgm.jp/why-cds-sold-so-well - サビはなぜ耳に残るのか
https://www.freebgm.jp/why-90s-jpop-choruses-stay-in-memory
🎧 実際の楽曲を聴いてみる
この記事で紹介した考え方をもとに制作したオリジナル楽曲は、FREEBGM RECORDSで公開しています。
FREEBGM RECORDSは、1980年代〜2005年のJ-POPスタイルをテーマにしたオリジナル音楽レーベルです。
ZARD、B’z、ビーイング系、小室ファミリー、歌謡曲などの時代から影響を受けたオリジナル楽曲を発表しており、全楽曲の作曲・プロデュースは MARUYA328 が担当しています。
▶ FREEBGM RECORDS
https://www.freebgm.jp/record-vr1.php
✉ 作曲・楽曲制作のお問い合わせ
90年代〜2005年J-POPスタイルのオリジナル楽曲制作や、作曲に関するご相談も承っております。
執筆者プロフィール
MARUYA328(中丸 勲)
合同会社momopla 代表 / 総合BGMプロデューサー
音楽制作歴30年以上。テレビ番組、企業案件、インターネット動画向けのBGM制作を手がけ、これまでに29,000曲以上のオリジナルBGM・効果音を制作。制作した楽曲は、テレビ番組、企業コンテンツ、有名YouTuberの動画など、幅広いメディアで採用されています。
現在は、オリジナル音楽素材サイト AIBGM(AI BGM Library) および FreeBGM.jp を運営し、映像制作者・動画クリエイター・企業向けに音楽素材を提供しています。公開楽曲の累計ダウンロード数は50万ダウンロードを突破しました。
また、自身も日々コンテンツ制作や音楽制作を行いながら、BGMの選び方、動画演出、著作権・商用利用、音楽制作、AI音楽活用などについて、実際の制作経験とサイト運営の実績をもとに情報を発信しています。
主な実績
- 音楽制作歴30年以上
- オリジナルBGM・効果音 29,000曲以上 制作
- 公開楽曲累計 50万ダウンロード突破
- テレビ番組での採用実績多数
- 有名YouTuber・映像クリエイターへの楽曲提供実績
- AIBGM(AI BGM Library) 運営
- FreeBGM.jp 運営
- 映像制作・動画活用・AI音楽分野に関する情報発信を継続中


コメント