AIで約3万曲を生成・検証して、私が初めて気づいたこと
※本記事は、30年以上作曲を続けてきた私自身の視点から、90年代~2000年代初頭のJ-POP黄金期について考察したものです。このテーマは一つの記事で語り尽くせるものではありません。本記事では、その中でも私が特に印象的だと感じたポイントを中心にまとめています。
AIが教えてくれた「音楽」という問い
AIが音楽を作れる時代になりました。
私自身も現在、AIを使って約3万曲近い楽曲を制作・検証しています。
この数字だけを見ると驚かれるかもしれませんが、私の場合は単純に大量生成したわけではありません。
お祭り、和風、ロック、バラード、昭和歌謡、店舗BGM、オーケストラ、ジャズなど、一つのジャンルを何十曲、何百曲と生成し、互いに聴き比べながら、「なぜこの曲は良く聴こえるのか」「なぜこちらは印象に残らないのか」を分析し続けてきました。
現在運営しているフリーBGMサイトには約2万9千曲を公開していますが、その大半はインストゥルメンタルです。
だからこそ、メロディだけではなく、アレンジや構成、空気感まで含めて比較する機会が数え切れないほどありました。
その中で、私はある疑問を持つようになります。
音楽は、本当に技術だけで作れるのでしょうか。
私は「魂」という言葉を信じていませんでした
音楽の世界では昔から、
「この曲には魂が入っている。」
という表現が使われます。
しかし私は、その言葉をどこか曖昧なものとして見ていました。
魂とは何なのか。
コード進行なのか。
メロディなのか。
アレンジなのか。
説明できないものを理由にするのは好きではありませんでした。
だから私は30年以上、音楽を技術として研究してきました。
AIは、驚くほど優秀でした
AIは本当に優秀です。
コード進行も成立しています。
メロディも綺麗です。
アレンジも整っています。
歌詞まで自然に作ってしまいます。
最初は私も、
「ここまで来たのか。」
と驚きました。
でも、何かが足りない
ところが、何百曲、何千曲と比較しているうちに、ある違和感が生まれます。
確かに完成度は高い。
でも、
もう一度聴きたくなる曲が少ない。
例えば、お祭りの曲を何百曲も生成します。
最初は、
「これで十分じゃないか。」
と思います。
しかし、その後に昔から親しまれているお祭りソングを聴き返すと、何かが違う。
技術では説明できない引力があるのです。
これはロックでも同じでした。
昭和歌謡でも同じでした。
和風でも同じでした。
私は様々なジャンルで同じ比較を繰り返しました。
その結果、
「技術だけでは説明できない何かがある。」
という考えに少しずつ変わっていきました。
織田哲郎さんの言葉と重なった
そんなことを考えていた頃、改めて織田哲郎さんのインタビューを読み返しました。
そこで印象的だったのが、
ZARDにも、
WANDSにも、
DEENにも、
同じような曲を書いているつもりはなく、それぞれのカラーや世界観を大切にしながら曲を書き分けていた、
という趣旨のお話です。
私はこの言葉を読んで、とても納得しました。
技術的には同じ作曲家です。
同じ人が書いています。
それでも、
ZARDにはZARDの歌があり、
WANDSにはWANDSの歌があり、
DEENにはDEENの歌がある。
これは単にコード進行を書き分けているだけではありません。
人を見て曲を書いていた。
私はそう感じました。
もちろんこれは織田哲郎さんお一人の証言であり、ビーイング全体を代表するものではありません。
しかし、一人のトップ作曲家が実際にそう語っていることは、私が30年以上作曲を続け、AIで約3万曲を比較してきた中で感じたこととも、不思議なくらい一致していました。
作曲家は、人を書いていた
今では企画書が先にあります。
世界観。
ターゲット。
SNS。
タイアップ。
求められるものが細かく決められています。
もちろん、それは現在の音楽制作として必要な部分でしょう。
しかし90年代の作曲家たちは、
まず人を見ていた。
歌声。
性格。
空気感。
魅力。
その人だから成立する歌を書こうとしていた。
だから、
同じビーイングサウンドと言われながらも、
ZARDはZARD。
WANDSはWANDS。
DEENはDEEN。
誰一人として同じには聴こえません。
阿久悠さんの言葉
昔、阿久悠さんは、とても印象的なことを話されていました。
歌は、出来上がった瞬間はまだ一つの歌に過ぎない。
しかし、それをアーティストが歌い、多くの人に聴かれ、愛され、歌い継がれていくことで、その歌はやがて**「モンスター」**になる。
つまり、作った本人の手を離れ、一人歩きを始める存在になるということです。
私は昔、この言葉をどこか感覚的な表現だと思っていました。
しかし、AIで約3万曲を生成・検証するようになった今なら、その意味が少し分かる気がします。
名曲は、作曲家だけが作るものではありません。
歌い手が命を吹き込み、聴いた人が感動し、それぞれの人生の中で何度も聴かれ、歌われることで、一曲の歌は少しずつ育っていく。
結婚式で流れた曲。
卒業式で歌った曲。
失恋した夜に何度も繰り返し聴いた曲。
そうした一人ひとりの思い出が積み重なることで、ただの一曲だった歌は、時代を超えて生き続ける「モンスター」になっていくのではないでしょうか。
だから私は、名曲とは作った瞬間に完成するものではなく、多くの人の人生と重なり合うことで、本当の意味で完成していくものなのだと、今は考えています。
AI時代だからこそ、人間の音楽を研究したい
私はAIを否定しているわけではありません。
むしろ毎日使っています。
そしてこれからも使い続けます。
AIは技術を教えてくれます。
コード進行も。
アレンジも。
メロディも。
しかし、
「なぜ、もう一度聴きたくなるのか。」
この問いだけは、AIを約3万曲検証した今でも、まだ答えが出ません。
だから私は、90年代から2000年代初頭のJ-POP黄金期を研究し続けています。
30年以上作曲を続け、AIで約3万曲を生成・検証した今だからこそ思います。
名曲とは、技術だけで生まれるものではない。
そこには、作曲家の技術だけでは説明しきれない、人と音楽との関係がある。
私は、その答えを探し続けるために、これからも90年代~2000年代初頭のJ-POPを研究し、曲を書き続けていきたいと思っています。
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🎧 実際の楽曲を聴いてみる
この記事で紹介した考え方をもとに制作したオリジナル楽曲は、FREEBGM RECORDSで公開しています。
FREEBGM RECORDSは、1980年代〜2005年のJ-POPスタイルをテーマにしたオリジナル音楽レーベルです。
ZARD、B’z、ビーイング系、小室ファミリー、歌謡曲などの時代から影響を受けたオリジナル楽曲を発表しており、全楽曲の作曲・プロデュースは MARUYA328 が担当しています。
▶ FREEBGM RECORDS
https://www.freebgm.jp/record-vr1.php
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90年代〜2005年J-POPスタイルのオリジナル楽曲制作や、作曲に関するご相談も承っております。
執筆者プロフィール
MARUYA328(中丸 勲)
合同会社momopla 代表 / 総合BGMプロデューサー
音楽制作歴30年以上。テレビ番組、企業案件、インターネット動画向けのBGM制作を手がけ、これまでに29,000曲以上のオリジナルBGM・効果音を制作。制作した楽曲は、テレビ番組、企業コンテンツ、有名YouTuberの動画など、幅広いメディアで採用されています。
現在は、オリジナル音楽素材サイト AIBGM(AI BGM Library) および FreeBGM.jp を運営し、映像制作者・動画クリエイター・企業向けに音楽素材を提供しています。公開楽曲の累計ダウンロード数は50万ダウンロードを突破しました。
また、自身も日々コンテンツ制作や音楽制作を行いながら、BGMの選び方、動画演出、著作権・商用利用、音楽制作、AI音楽活用などについて、実際の制作経験とサイト運営の実績をもとに情報を発信しています。
主な実績
- 音楽制作歴30年以上
- オリジナルBGM・効果音 29,000曲以上 制作
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- テレビ番組での採用実績多数
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